プロダクション・ノート短編映画『モーメント・カフェ』

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警告! 〜以下ネタバレ注意〜


当時、この短編作品を作るにあたり2つの目標を掲げた。その次に計画していた長編作品へのステップになること。そして35ミリフィルムで撮ること。これまで8ミリや16ミリで制作してきたが、本格的な高画質の35ミリで撮ることが必須であった。UCLAフィルムスクールで習得したのは“フィルム”での作り方だった。今なら、特別こだわらずフィルムでなくデジタル映像でも充分いいと思うが、当時デジタルはまだ発展途上だった。フィルムで制作しないと業界から本格的なプロとして認められないという暗黙のルールもまかり通っていた。フィルムメーカーとして乗り越えなければならない一種の試練であった。

先ず、ストーリーのコンセプトとして日本人にしか作れないアイデアを練った。すると色々な格言、諺が浮かんで来た。中国から由来しているものも沢山あると思うが、心に訴えられるテーマが凝縮され、簡素に表せる古来からの教えがないかを探した。「(人生は)七転び八起き」に出くわした。昭和っぽいかもしれないが、自分も好きな諺で、世界中誰にでも共感すると感じた。*語源が定かではなかったので、主人公のミスター・タニグチの台詞の中では、「日本の諺」とでなく「アジアの諺」にしてある。日本独特のワビ・サビ的な深い哲学的な風情を感じさせる。



人生は山あり谷ありの連続で、一人では生きていくのはナカナカ難しい。いや生きてはいけない。中村雅俊の『ふれあい』の歌詞(作詞:山川啓介)にもあるように(古いなあ:))、みんなとの助け合いがあって、そこで初めて自分が存在する、というテーマを底辺に定めた。*ちなみに自分の姉が中村雅俊の大ファンだったので、彼の歌やTVドラマ番組には多大な影響を知らず知らずのうちに幼い頃から受けていた。『ふれあい』の歌詞は、てっきり小椋佳が作詞したと勘違いしていた。

ともかくも短編なので、ストーリー上、出来事やプロットも出来るだけ数えられる程に限定した。撮影スケジュールや予算も考慮して、主に1カ所で完結出来るストーリーにした。背景の設定は、普遍的でモダン的で庶民的で癒し的なものを含めた情緒がかもしだせるカフェにした。個人的にもコーヒーは好きだ。カフェという何ともロマンチックで出逢いのある落ち着く洗練された雰囲気が気に入っている。響き、語呂も良い。冒頭のタイトルに現れるカットの背景にも使ったコーヒーの波打つ表面は、一瞬耽美的でミステリアスだ。一時の味わいを楽しみ、飲まれて消えて行くという人生の様なはかなさも物語る。流動性のあるコーヒー自体が、時間と人間関係をつなぐシンボリズムとなっている。



キャラクターは二組の若者と年配のカップル(計4名)に設定し、それぞれパラレルに進行するストーリーに組み立てて、ある時、接点が生じお互い影響されながら大切なことに気付く、という展開を構想した。アクションは最低限で会話中心にした。そして沈黙と俳優のリアクションも工夫して組み立てた。

伝えたい真意は、どの世代にも限らずアーティストの精神的な苦悩を描きたかった。理想的かも知れないが、落ち込んだ時に困難を乗り越えるには、愛情や心情的サポート(emotional support)が、(アーティストに限らずだが)、時には誰でも必要なんだ、というシンプルなメッセージを伝えたかった。周りからのちょっとした思いやりや励ましでなんとか乗り越えられるという希望や可能性を感じてもらいたかった。



アメリカに長く住んでいると、気のせいかも知れないが(日本も同様かもしれないが)、老人のホームレスや独り暮らしなど、 自分の意志なのか、やむを得ないのか、独りで行動する年配、老人たちがとても多いような気がする。実際の撮影に使った海が見渡せるサンタモニカでも、お年寄りが公園のベンチで独りポツンと座って、空の飛行機やカモメをじっと長らく眺めていたりする。何かを思っているのだろうか、と感じてしまう光景にしばしば出くわす。きっと寂しいのかもしれない、と。想い出を懐かしんだり、誰かのことを思っているように見えた。なんとなくベンチに座るイメージが脳裏に焼き付いていた。*サンタモニカには隠居の老人ホームが多いらしいことが後で知った。なるほど道理で年配が多いわけかと。

しっかり者のミッシェルとハナは、天使であり女神であり内側に強い意志を秘めた絶対的な存在である。ストーリーの構造ではウイットネス(目撃者)的な役割でもある。母性本能的に『見守る』キャラクターである。一方男のミスター・タニグチとビリーは、精神不安定なアーティストだ。ミッシェルによって男同士の一種の友情的な助け合いも生まれる。共通する感性でつながるのだ。若者にとって人生経験が豊富な人たちから、また異文化から教わることは多大にある。ビリーは自由奔放だが、強がりで実は繊細で深い悩みばかりである。老人の知恵というか教訓というか、おもむろではなく些細な思いやりにビリーは最後に気付くキャラクターに設定した。ミスター・タニグチもハナやミッシェルのおかけで、若者達に何か貢献出来るという行動に一歩踏み出す勇気を与えられた。誕生日のお祝いでハナからのお返しは、自分にだけのみならず、自分の周りにも手を差し出して与えられる思いやりをもらったのである。



テクニカルのシーン分析だが、冒頭のアートスタジオで老人が椅子に寝ているショットがあるが、カメラが動くと、同じ連続した長回しショットで左から彼が入り込む。時空を超えた空想的ショットでもあるが、これはミケランジェロ・アントニオーニ監督の技法を参考にした。ジャック・ニコルソン主演の『さすらいの二人(1975年)』(アメリカタイトル『The Passenger』、イタリアタイトル『Professione:reporter』や、ジョン・セイルズ監督の『Lone Star(1996年)』などを見ればご理解いただける。



店内のテーブル正面低めからのローアングルショットやミスター・タニグチがカフェに入りミッシェルに挨拶するカット、エンディングの海を眺めているシンメトリー風のカットとかは、小津安二郎監督作品を参考にし、癒しと情緒を醸し出せるように工夫した。



何気ないミッシェルとミスター・タニグチの会話の内容もキャラクターの内面がにじみ出てくるように気を遣った。離婚を繰り返す両親を持つミッシェルの必ずしも幸せではなさそうな家庭状況、親子関係を示唆した。現在は博士号を目指す努力家である。ミスター・タニグチは亡くなった妻のハナの誕生日を祝いに来る。想い出の服を着てくる。孤独と戦っているのは実はミスター・タニグチだけでなく、ミッシェルもなのだ。だからこそミッシェルにはテーブルのハナの姿も見える。センシティビティーを持っているのだ。一方余裕の無い未熟なビリーはまだ見えていなかった。



ケーキは生命体、キャンドルは生命力を象徴している。ちなみに置いたチップは妥当な$20にした。$100札だとやり過ぎだし、$10だと少な過ぎるとして$20 に落ち着いた。



その撮影ロケ地のカフェはウエストウッド通りにあるが、ビリーとミッシェルのクライマックスの口論シーンは、最終日の真夜中の撮影になってしまった。歩道からHMI(日昼の自然光用)の10Kという大きい照明を店内に向けてたいて、いつまでも昼のシーンにした。最後二人がキスをしてカメラが右にパンして窓へ動いていくが、まさにそこに10K照明が設置してあるのだ。これもムービーマジックの賜物である。



冒頭のエスタブリッシュング・ショット(外観)で、カフェの前に駐車してある水色のRAV4の車は、当時の自分の愛車であった。ミスター・タニグチがカフェに向う際に道路を渡るシーンは、ウエストハリウッドで撮影した。本当に走行中の車からクラクションを鳴らされた。



最後のショットは、明るめの爽快感、新たな旅立ちを表現する海のシーンと決めていた。窮屈な屋内から、一気に解放感のある広い屋外へとコントラストさせた。ミスター・タニグチは、カモメの鳴き声やパームツリーや、いちゃつく若いカップルなども、今回はちょっと違って聞こえたり見えたり感じたりする。これは新たな感性が再び芽生え始め、以前のパッション(熱意)を取り戻したかも、という再出発の象徴だ。



そのエンディングは初めて使うクレーンショット(予算を費やした!)で、背景に落ちる夕焼けを待っていた。鮮やかな色は10〜15分ほどしかない。クレーンの動きを前もって何度もリハーサルし準備万端で待機した。いざカメラを取り付けて撮影しようとしたが、結構重くてクレーンが少ししなり始めてしまった。本当はもっと高くまで持ち上げたかったが諦めた。まあ無事撮れたただけでもラッキーとしよう。そのシーンで歩道を横切る人たちはエキストラと実際の人たちでミックスされた。自転車をひいて歩く役のフィルムメーカー仲間のオスカーは、ゆっくり目という指示に従ってスローに動いている。地面に長く映る人影にも注目。



ミスター・タニグチは、よく帽子を置き忘れる癖がある。映画ではプロップ(小道具)と言うが、巧く使う事でキャラクターの性格を表すことができる。杖も考えたが、それほど老いてはいないので逆効果としてやめた。衣装も同じようにその時その時の感情を表せる。ミッシェルは、常時水色とピンクの鮮やかで見栄えの良い組み合わせでポジティブに、ミスター・タニグチとビリーはアーストーンの地味系に(ミスター・タニグチはエンディングでは、何か精神的に吹っ切れたかのように明るいアロハシャツに変わる)、ハナはお洒落に着飾った祝福のドレスに。舞い降りて来た天使の意味もある。テーブルの真ん中に置いてある黄色い花は、平和、調和を、天井の電灯は冷たさ、孤独を、海の船やカモメは、自由、開放、旅立ちを象徴している。



これも撮影と演技のコツ的テクニカル部分だが、握手する際、フレーム内に入れるため通常より高めに握手をしている。実生活では不自然だが、映画では受け入れられる。



フレームの上から黒いブームマイクが見えてしまっている!



「人生は七転び八起き、Life is like falling down seven times and getting back up eight times」だ。素晴らしい諺はこれからの世代にもきっと必ず伝承し続けられるだろう。一瞬(モーメント)の飲み物がコーヒーであり、味わいであり、ひと時(モーメント)の出来事が人生に多大な影響を与える。是非とも心温まるハートウォーミングドラマを御楽しみ下さい。あなたもカフェ一杯を頂きたい気分になるかもしれません。


短編映画『モーメント・カフェ』日本語字幕付き (18分)

【1998年/短編18分/ヒューマンドラマ/35ミリ映画/英語/カラー】
「人生は七転び八起き」
アーチストの葛藤を描いた恋愛短編ドラマ
★ワールドフェスト・ヒューストン国際映画祭金賞受賞
★ニューヨーク・インデペンデント国際映画祭招待作品
★ニューヨーク・ジャパンUSソサエティー映画祭招待作品

あらすじ:
愛妻を失い、画家としての活動にも自信を失っていたジムは、亡き妻の誕生日を祝うために地元の小さなカフェに行く。そのカフェで働く大学院生ミッシェルと、俳優志望の恋人ビリー、それぞれのストーリーがある衝動からひとつに結びついていく。柔らかなタッチで語りかけるハートウォーミングドラマ。

クレジット
製作・脚本・監督・編集:長土居 政史
撮影監督:ロブ・ドウミット
音楽:アラン・リー・シルバ
助監督:フィル・ファラウジャ
製作主任/美術監督:フランシス・モハラジャン
照明:ジョン・ペドーン
カメラ助手:ジョー・ラング
サウンド録音:ジム・マコウスキー
制作会社:MAPi プロダクション

キャスト
ジム・タニグチ:ケン・タケモト
ハナ:パトリシア・プレイス
ミッシェル:ジェニファー・ストーリィ
ビリー:ジェイソン・フラム



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沢山面白いのがあるよ!

  • 2017/02/25(土) 03:57:23

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1963年東京生まれ。東京出身。1987年ミネソタ州マカレスター大学卒業後、アーサー・ヤング・インターナショナル(現アーンスト&ヤング)入社。1994年UCLA大学院映画学部にて修士学位号(MFA)取得。MPAA(全米映画協会)賞受賞UCLAシネコ映画団体代表。

1999年春、短編「モーメント・カフェ」がヒューストン・ワールドフェスト映画祭で金賞受賞。2000年2月初長編スリラー映画「Cruel Game」DVD全米リリース(ユニバーサル)。「エンジェルゲーム」DVD日本マーケットリリース(D’s Gate)。「Deception」海外40ケ国配給中。

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