プロダクション・ノート短編映画『モーメント・カフェ』

プロダクション・ノート短編映画『モーメント・カフェ』


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警告! 〜以下ネタバレ注意〜


当時、この短編作品を作るにあたり2つの目標を掲げた。その次に計画していた長編作品へのステップになること。そして35ミリフィルムで撮ること。これまで8ミリや16ミリで制作してきたが、本格的な高画質の35ミリで撮ることが必須であった。UCLAフィルムスクールで習得したのは“フィルム”での作り方だった。今なら、特別こだわらずフィルムでなくデジタル映像でも充分いいと思うが、当時デジタルはまだ発展途上だった。フィルムで制作しないと業界から本格的なプロとして認められないという暗黙のルールもまかり通っていた。フィルムメーカーとして乗り越えなければならない一種の試練であった。

先ず、ストーリーのコンセプトとして日本人にしか作れないアイデアを練った。すると色々な格言、諺が浮かんで来た。中国から由来しているものも沢山あると思うが、心に訴えられるテーマが凝縮され、簡素に表せる古来からの教えがないかを探した。「(人生は)七転び八起き」に出くわした。昭和っぽいかもしれないが、自分も好きな諺で、世界中誰にでも共感すると感じた。*語源が定かではなかったので、主人公のミスター・タニグチの台詞の中では、「日本の諺」とでなく「アジアの諺」にしてある。日本独特のワビ・サビ的な深い哲学的な風情を感じさせる。



人生は山あり谷ありの連続で、一人では生きていくのはナカナカ難しい。いや生きてはいけない。中村雅俊の『ふれあい』の歌詞(作詞:山川啓介)にもあるように(古いなあ:))、みんなとの助け合いがあって、そこで初めて自分が存在する、というテーマを底辺に定めた。*ちなみに自分の姉が中村雅俊の大ファンだったので、彼の歌やTVドラマ番組には多大な影響を知らず知らずのうちに幼い頃から受けていた。『ふれあい』の歌詞は、てっきり小椋佳が作詞したと勘違いしていた。

ともかくも短編なので、ストーリー上、出来事やプロットも出来るだけ数えられる程に限定した。撮影スケジュールや予算も考慮して、主に1カ所で完結出来るストーリーにした。背景の設定は、普遍的でモダン的で庶民的で癒し的なものを含めた情緒がかもしだせるカフェにした。個人的にもコーヒーは好きだ。カフェという何ともロマンチックで出逢いのある落ち着く洗練された雰囲気が気に入っている。響き、語呂も良い。冒頭のタイトルに現れるカットの背景にも使ったコーヒーの波打つ表面は、一瞬耽美的でミステリアスだ。一時の味わいを楽しみ、飲まれて消えて行くという人生の様なはかなさも物語る。流動性のあるコーヒー自体が、時間と人間関係をつなぐシンボリズムとなっている。



キャラクターは二組の若者と年配のカップル(計4名)に設定し、それぞれパラレルに進行するストーリーに組み立てて、ある時、接点が生じお互い影響されながら大切なことに気付く、という展開を構想した。アクションは最低限で会話中心にした。そして沈黙と俳優のリアクションも工夫して組み立てた。

伝えたい真意は、どの世代にも限らずアーティストの精神的な苦悩を描きたかった。理想的かも知れないが、落ち込んだ時に困難を乗り越えるには、愛情や心情的サポート(emotional support)が、(アーティストに限らずだが)、時には誰でも必要なんだ、というシンプルなメッセージを伝えたかった。周りからのちょっとした思いやりや励ましでなんとか乗り越えられるという希望や可能性を感じてもらいたかった。



アメリカに長く住んでいると、気のせいかも知れないが(日本も同様かもしれないが)、老人のホームレスや独り暮らしなど、 自分の意志なのか、やむを得ないのか、独りで行動する年配、老人たちがとても多いような気がする。実際の撮影に使った海が見渡せるサンタモニカでも、お年寄りが公園のベンチで独りポツンと座って、空の飛行機やカモメをじっと長らく眺めていたりする。何かを思っているのだろうか、と感じてしまう光景にしばしば出くわす。きっと寂しいのかもしれない、と。想い出を懐かしんだり、誰かのことを思っているように見えた。なんとなくベンチに座るイメージが脳裏に焼き付いていた。*サンタモニカには隠居の老人ホームが多いらしいことが後で知った。なるほど道理で年配が多いわけかと。

しっかり者のミッシェルとハナは、天使であり女神であり内側に強い意志を秘めた絶対的な存在である。ストーリーの構造ではウイットネス(目撃者)的な役割でもある。母性本能的に『見守る』キャラクターである。一方男のミスター・タニグチとビリーは、精神不安定なアーティストだ。ミッシェルによって男同士の一種の友情的な助け合いも生まれる。共通する感性でつながるのだ。若者にとって人生経験が豊富な人たちから、また異文化から教わることは多大にある。ビリーは自由奔放だが、強がりで実は繊細で深い悩みばかりである。老人の知恵というか教訓というか、おもむろではなく些細な思いやりにビリーは最後に気付くキャラクターに設定した。ミスター・タニグチもハナやミッシェルのおかけで、若者達に何か貢献出来るという行動に一歩踏み出す勇気を与えられた。誕生日のお祝いでハナからのお返しは、自分にだけのみならず、自分の周りにも手を差し出して与えられる思いやりをもらったのである。



テクニカルのシーン分析だが、冒頭のアートスタジオで老人が椅子に寝ているショットがあるが、カメラが動くと、同じ連続した長回しショットで左から彼が入り込む。時空を超えた空想的ショットでもあるが、これはミケランジェロ・アントニオーニ監督の技法を参考にした。ジャック・ニコルソン主演の『さすらいの二人(1975年)』(アメリカタイトル『The Passenger』、イタリアタイトル『Professione:reporter』や、ジョン・セイルズ監督の『Lone Star(1996年)』などを見ればご理解いただける。



店内のテーブル正面低めからのローアングルショットやミスター・タニグチがカフェに入りミッシェルに挨拶するカット、エンディングの海を眺めているシンメトリー風のカットとかは、小津安二郎監督作品を参考にし、癒しと情緒を醸し出せるように工夫した。



何気ないミッシェルとミスター・タニグチの会話の内容もキャラクターの内面がにじみ出てくるように気を遣った。離婚を繰り返す両親を持つミッシェルの必ずしも幸せではなさそうな家庭状況、親子関係を示唆した。現在は博士号を目指す努力家である。ミスター・タニグチは亡くなった妻のハナの誕生日を祝いに来る。想い出の服を着てくる。孤独と戦っているのは実はミスター・タニグチだけでなく、ミッシェルもなのだ。だからこそミッシェルにはテーブルのハナの姿も見える。センシティビティーを持っているのだ。一方余裕の無い未熟なビリーはまだ見えていなかった。



ケーキは生命体、キャンドルは生命力を象徴している。ちなみに置いたチップは妥当な$20にした。$100札だとやり過ぎだし、$10だと少な過ぎるとして$20 に落ち着いた。



その撮影ロケ地のカフェはウエストウッド通りにあるが、ビリーとミッシェルのクライマックスの口論シーンは、最終日の真夜中の撮影になってしまった。歩道からHMI(日昼の自然光用)の10Kという大きい照明を店内に向けてたいて、いつまでも昼のシーンにした。最後二人がキスをしてカメラが右にパンして窓へ動いていくが、まさにそこに10K照明が設置してあるのだ。これもムービーマジックの賜物である。



冒頭のエスタブリッシュング・ショット(外観)で、カフェの前に駐車してある水色のRAV4の車は、当時の自分の愛車であった。ミスター・タニグチがカフェに向う際に道路を渡るシーンは、ウエストハリウッドで撮影した。本当に走行中の車からクラクションを鳴らされた。



最後のショットは、明るめの爽快感、新たな旅立ちを表現する海のシーンと決めていた。窮屈な屋内から、一気に解放感のある広い屋外へとコントラストさせた。ミスター・タニグチは、カモメの鳴き声やパームツリーや、いちゃつく若いカップルなども、今回はちょっと違って聞こえたり見えたり感じたりする。これは新たな感性が再び芽生え始め、以前のパッション(熱意)を取り戻したかも、という再出発の象徴だ。



そのエンディングは初めて使うクレーンショット(予算を費やした!)で、背景に落ちる夕焼けを待っていた。鮮やかな色は10〜15分ほどしかない。クレーンの動きを前もって何度もリハーサルし準備万端で待機した。いざカメラを取り付けて撮影しようとしたが、結構重くてクレーンが少ししなり始めてしまった。本当はもっと高くまで持ち上げたかったが諦めた。まあ無事撮れたただけでもラッキーとしよう。そのシーンで歩道を横切る人たちはエキストラと実際の人たちでミックスされた。自転車をひいて歩く役のフィルムメーカー仲間のオスカーは、ゆっくり目という指示に従ってスローに動いている。地面に長く映る人影にも注目。



ミスター・タニグチは、よく帽子を置き忘れる癖がある。映画ではプロップ(小道具)と言うが、巧く使う事でキャラクターの性格を表すことができる。杖も考えたが、それほど老いてはいないので逆効果としてやめた。衣装も同じようにその時その時の感情を表せる。ミッシェルは、常時水色とピンクの鮮やかで見栄えの良い組み合わせでポジティブに、ミスター・タニグチとビリーはアーストーンの地味系に(ミスター・タニグチはエンディングでは、何か精神的に吹っ切れたかのように明るいアロハシャツに変わる)、ハナはお洒落に着飾った祝福のドレスに。舞い降りて来た天使の意味もある。テーブルの真ん中に置いてある黄色い花は、平和、調和を、天井の電灯は冷たさ、孤独を、海の船やカモメは、自由、開放、旅立ちを象徴している。



これも撮影と演技のコツ的テクニカル部分だが、握手する際、フレーム内に入れるため通常より高めに握手をしている。実生活では不自然だが、映画では受け入れられる。



フレームの上から黒いブームマイクが見えてしまっている!



「人生は七転び八起き、Life is like falling down seven times and getting back up eight times」だ。素晴らしい諺はこれからの世代にもきっと必ず伝承し続けられるだろう。一瞬(モーメント)の飲み物がコーヒーであり、味わいであり、ひと時(モーメント)の出来事が人生に多大な影響を与える。是非とも心温まるハートウォーミングドラマを御楽しみ下さい。あなたもカフェ一杯を頂きたい気分になるかもしれません。


短編映画『モーメント・カフェ』日本語字幕付き (18分)

【1998年/短編18分/ヒューマンドラマ/35ミリ映画/英語/カラー】
「人生は七転び八起き」
アーチストの葛藤を描いた恋愛短編ドラマ
★ワールドフェスト・ヒューストン国際映画祭金賞受賞
★ニューヨーク・インデペンデント国際映画祭招待作品
★ニューヨーク・ジャパンUSソサエティー映画祭招待作品

あらすじ:
愛妻を失い、画家としての活動にも自信を失っていたジムは、亡き妻の誕生日を祝うために地元の小さなカフェに行く。そのカフェで働く大学院生ミッシェルと、俳優志望の恋人ビリー、それぞれのストーリーがある衝動からひとつに結びついていく。柔らかなタッチで語りかけるハートウォーミングドラマ。

クレジット
製作・脚本・監督・編集:長土居 政史
撮影監督:ロブ・ドウミット
音楽:アラン・リー・シルバ
助監督:フィル・ファラウジャ
製作主任/美術監督:フランシス・モハラジャン
照明:ジョン・ペドーン
カメラ助手:ジョー・ラング
サウンド録音:ジム・マコウスキー
制作会社:MAPi プロダクション

キャスト
ジム・タニグチ:ケン・タケモト
ハナ:パトリシア・プレイス
ミッシェル:ジェニファー・ストーリィ
ビリー:ジェイソン・フラム



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  • 2017/02/25(土) 03:57:23

プロダクション・ノート短編映画『サムライ・セールスマン』

プロダクション・ノート短編映画『サムライ・セールスマン』


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警告! 〜以下ネタバレ注意〜



『サムライ・セールスマン』は初めて16ミリフィルムで撮影した短編映画である。(中学生の時、親父のカメラを借りて8ミリ映画で『月に吠えろ』という刑事アクション物を撮ったことがある。どういうわけかコマ数を間違えてチャップリン並みのコメディー映画になってしまったが…学園祭で上映して逆に受けた!)。UCLAフィルムスクールの必修科目として制作した作品だ。ちなみに完成まで2年かかり、映画作りがどんなに大変かを身にしみて仕上げた賜物である。



タイトルは、当時アルバイトしていたハリウッドの制作会社のアメリカ人プロデューサーにアメリカ人受けするように聞いたところ、「サムライ」の響きがいいし、直接的に訴えて分かりやすくていいのでは、とのアドバイスを貰って、このタイトル(結構ベタだが)に決めた。スクリプト段階での当初のタイトルは『Going Home』だった。『Coming Home(日本語タイトル『帰郷』)』というベトナム戦争帰還兵の恋愛反戦映画(ハル・アシュビー監督、ジェーン・フォンダ、ブルース・ダーン、ジョン・ヴォイド主演、1978年)と内容は全く異なるが、多少あやかって最初はそのタイトル名を付けた。

作り手として、伝えたかったテーマは、人生で一番重要なものは何か? ズバリそれは表面的なものではなく常に心の支えとなっている家族愛!である。「Family is forever(ずっと家族)」「 Family is everything(家族が全て)」「Family bonding will overcome anything(家族の絆があれば何でも乗り越えられる)」などだ。また言い換えれば、自己発見の旅、でもある。異国での体験も重ねてこのテーマに辿り着いた。



教授たちからの助言は、おそらく今しか本当に作りたい作品は作れないだろうから(当時は何を言っているのかよく分からなかったが、後々なるほど、と理解出来るようになった)、心と相談し、真の自分と素直に向き合って脚本を書きなさい、と教えられた。ということで自分にできることは、世界中どこでも共通するユニバーサルなテーマを描くとしても、その描く方法や風味はやはり何かしら日本と関係ある要素を使わない手は無い、と決めた。学校では色々な生徒達がいた。みなそれぞれユニークで異なった文化やバックグラウンドを持ち合わせ、彼らの作品は個人的な思想や思考、出身地、育った環境、社会的価値観を反映しているので大変興味があり、同時に触発された。『ジャポネスク』は自分の強みであり、世界中の人たちにその良さも伝えたかった、という気持ちは少なからず心底に強く持っていた。それが自分のオリジナリティーでもあると言い聞かせた。



自分の頭で先ず描いた絵は、サムライの格好と刀、耽美的な着物と、花や樹木が奇麗な日本庭園(UCLAがキャンパス近くに所有していた日本庭園で撮影許可が降りた)である。サムライは、アメリカとの違いを比較しやすいようにした定番。まあアメリカ人の興味を引くため。受けるためでもあった(笑)。冒頭で刀を振りかざすシーンは「未来を切り開く」シンボリズム(象徴)。主人公ケンの気合いだけで、台詞が無い。モンタージュ的なアクションだけにした。そして時空を飛び越えて、異文化からアメリカの世界に踏み入れ、自分は一体何者かを見付け出す、というオープニングを浮かべた。タイプとしては「Fish out of water」、つまり場違いな状況に主人公が置かれ、色んな事を体験して成長して行く、という流れだ。

テロ前の当時は、明るくとても平和な時代だったような気がする。ちょうどバブルがはじける前の楽観的でイケイケの時代。日本企業がアメリカの不動産などを買いあさっていた時代。自分もUCLA入学前に、大手会計事務所でビジネス・マネージメント・コンサルタントとして数年ロサンゼルスのダウンタウンに勤務していた。右も左も分からず学ぶ事ばかりの厳しい試練の場でもあった。大手不動産会社のクライアントがLAのビルを買いたいですが…ハワイのホテルも買いたいですが、ゴルフ場付きで……ところでいくらですか? と聞いてくる。こちらのチームは物件を探して、値段を出して、推薦して、色々ファイナンスの方法や会計処理作業を提案したり…の業務であった。なるほどと感心したのは、実際に調べて分析すればビルの価値、値段を算出できるという事実であった。その値段が高いか安いかは別にして…。善くも悪くもアメリカにおいて、日本のビジネスパワーの影響力を生で体験したので、ストーリー作りの素材としては大変役立った。ケンが降り立つロサンゼルスのダウンタウンは、自分が毎日通勤した界隈。前勤務地のビル正面で撮影しようとしたら、プロレスラーみたいな巨体警備員に追い払われた思い出もある。



アメリカという環境に揉まれながら日本のアイデンティディーを探し求めた。ドンデン返しも踏まえ日本の昔話『浦島太郎』的な寓話も取り入れた。伝統(ケン玉など)とテクノロジー(ビデオ機器、スポーツカーなど)の対比の中、日本の伝統をモダン社会のアメリカ人(子供向け)へ売る主人公のケンは、社会、教育、世界を変えようと意気込むが、なかなか思い通りには運ばず厳しい現実に直面する。古典的な家庭訪問販売をコメディータッチで笑いを誘いながら、底辺には奥深い悲壮感や義務感、使命感、辛さが見え隠れする要素を組み込んだ。サラリーマンとして会社からノルマを与えられプレッシャーもあるだろう。日本を背負っているという自負もある。サムライ精神のプライドもある。家族と離ればなれで寂しい想いもしているだろう。



実際自分も高校当時ある冬休みに漬け物家庭訪問販売のアルバイトをした。グループに分かれて東京の下町まで皆でバンで走りサンプルを手に持ちながら、割り当てられた区域で一軒一軒訪ね回るのである。門前払いが続くと落胆して辛い思いをする。しかし時には、心暖かいおばちゃん達が、「意外とおいしいわね」と隣近所にも声をかけて仲間達を集めてきてくれて沢山余分に買ってくれた時は、涙が出そうになった。それはそれはありがたかった。寒い中、素人の若者が漬け物を売っている姿に可哀想と感じたのかもしれない。自分の母親にも売りつけて買ってくれたことも忘れない。そんな想いも含めながら、アメリカにおける孤独な日本人のセールスマンの悲哀を描いた。アーサー・ミラーの戯曲『セールマンの死』のノスタルジックな影響もさながら根底にある。




ケンが訪問先で犬に追い掛けられるシーンだが、撮影スタッフとして手伝ってくれたフィルムメーカー仲間のエドが飼っていた犬で、名前はフラッパー。エドの指示で、言う事をきちんと聞いてくれて何回も走って吠えてくれた。名演技に感謝。ケンの会社名、MONYは、日本の某会社名とMONEYをかけたもの。笑いを誘う皮肉ネタ。



テクノロジーに対抗して、伝統的な日本のトイをアメリカで売り回るというのがミソで、ケン自身も少しは矛盾を感じながらも、だからこそ今日本の良さを伝えたい、という思惑でぐいぐい突っ走る。ケン玉はシンプルだが、これほど工夫されて素晴らしく子供達(大人達も)の心をくすぐるトイはない。色々な遊び方も出来るし、伝統文化の知恵は奥深い。ストーリー上、日本に残して来た息子のジローが好きなトイでもある。息子を思い出す象徴でもある。




ケン役のデイヴィッドは、毎日何十回もケン玉の訓練していたのを陰から見ていた。功を奏してか、本番撮影では一発で見事に決めた。その驚きをまさに表しているのが少年マイケルのリアクションだ。本物である。演技ではない。Good acting is not acting、そしてReacting is not lying、つまりそのリアクションにウソはないのである。



オープニングとエンディングが同じにおさまる映画ストラクチャーを「ブックエンド(ブックエンズ)」(最初と最後のシーンが同じの本、書籍の意味)と言い、その典型的な法則を用いた。日本庭園の池の鯉で始まり、日本庭園の池の鯉で終わる(例・「プライベート・ライアン」、「ゴーン・ガール」)。鯉は、平和、安定、癒し、安らぎ、つまり、家、家庭、家族のシンボリズム(象徴)。最後に桜の花びらが池に寂しく散っているのは、人生は長いようで短いという、ワビサビの一瞬のはかなさをも表現している。



主人公が途中から英語のアクセントが消えるのも意図的に、観客に「……ん?」何かおかしい、と前触れをどことなく植え付けるための工夫である。セットアップ&ペイオフ(仕掛け、仕込み、下準備、前置きと、結果、報酬、落ち)の法則だ。あとでなるほどと納得する種を仕掛けておくのだ。試写をした後、全く気付かない視聴者も何人かいた。海のシーンは『猿の惑星』、『グリース』、『エンジェルゲーム』でも使われたハリウッド映画では定番の海岸だ。挫折しながらケンがさまようロングショット(遠くからの撮影)では、タイミング良くカモメの一団がフレームを横切ってくれた。



途中で突如と現れる謎の美女ドライバーのジョディ(Jody)。彼女の名前は、スペルが違うがジョディ・フォスター(Jodie Foster)から拝借した。アメリカン・スマイルの明るい笑顔でリラックスして楽観的な彼女は、ケンが心に描いたまさにハッピーで理想的なアメリカの象徴である。




一方ケンのキャラクターは、見た目はストイックで一途で真面目で忍耐強く責任感が強い典型的な日本人ビジネスマンだ。戦後の昭和の高度成長期に、寒いアラスカまで冷蔵庫を売りに行った日本人セールスマンのエピソード(物が凍ってしまうので保存には冷蔵庫が便利という)を聞くと、彼らのような海外に飛び出して行ったセールスマンたちのお陰で、戦後の日本経済が復興されたと言っても過言ではない、と思う。その不屈の精神も作品に反映させたかった。ケンの内面は、理想主義、楽観主義、唯物主義をも実は持ち合わせていた。自分に課せられた義務的な任務から一時的にせよ現実避行し、脱皮と解放感から、新たな自分を発見していく。さらなる自信、野望、貪欲さが支配してしまう。「Greed is good(強欲は善)」という名台詞がオリバー・ストーン監督、マイケル・ダグラス主演の映画『ウォール街(1987年)』で使われたが、その名残があった時代だ。『サムライ・セールスマン』で金や名声などの物質主義に溺れかけた主人公の移り変わりの描写は、日米双方にその傾向の危惧を少なからず訴えているのだ。日本とアメリカの経済大国、拝金主義へチクリとの批判であり、警告なのだ。異国に来て初めて故郷の良さを再認識し、ケンは最終的に重要なのは家族愛だと気付くのである。



ジョディの部屋の壁に見える黄色と黒のアートワークは、自分が作ったマピコアートの一部である。その謎めいたデザインは、疑惑と迷宮入りのシンボリズムでもある。入り込みすぎると危険だぞ、自分を失うと大変だぞ、というサインでもある。ジョディが結婚式の準備の為、外へ買い物に出かけると言って、ケンが独り部屋に残されるシーンがある。ドアの閉まる音が、バタンっと、重い鉄鋼ドアの様な音がする。これは彼が刑務所みたいな空間に閉じ込められてもう逃げられない、という比喩で、さあ、ここで答えを出さなければならない、という究極の状況に追い詰められた設定を暗示している。待機中、情報誌を手にして読むケンだが、その表紙はケン自身の写真が載っている。もうそこは幻想の世界に入り込んでいるのだ。




カッコイイスポーツカー(当時MAZDAのMiataが超人気だった)、ビジネススーツ、奇麗な女性……資本主義に生まれ育つ男だったら、それはある種の成功の象徴であり、誰でも手に入れたいとは思う。しかし、そこには大きな落とし穴が待っていたのである。表面的な物よりも大切な物を忘れていないか? と問いかけているのだ。



ドライブ中、素早いカットが続く意味は、ケン玉の赤い玉がくるくる回るのとオーバーラップして、催眠術にかけられアリ地獄のように無意味でむなしい世界へといつまでも舞落ちてしまう比喩でもある。そして時間は過ぎ去るばかりで誰も止める事は出来ないという自然の摂理も示唆しているのだ。




夜、混雑していないジャズバーで酔ったケンが得意気にスピーチするが、階段をあがった左奥の踊り場に撮影用のオレンジ色のジェルフィルターを付けた照明が設置してあるのが丸々見えてしまっている。ほぼ誰も気付いていなかったようだが…。



ジョディの部屋で、ケンが昔を思い出す長いモノローグがある。一瞬赤いミニカーのカットが映るが、車はバックして進み、停止する。この動きは違和感を与え、これが現実化どうかをふと思わせる意図と、無意識のうちに想い出がどんどん自分の性格を形成した少年時代へと時空を超えて後戻りしているというケンの心情も描いている。



ジョディを待つことにくたびれたケンが浮かれながらダンスを続ける。もうやけくそになって自己破壊に近付いている象徴である。キャビネットを開け、その大事な発見に気付くきっかけを与えてくれたのも、現代テクノロジーの機械のお陰である、という皮肉なつながりを設定した。便利なテクノロジーの発展は、時には忘れかけた大切な物を見つけ出してくれる役割もする。一時は、あらゆる誘惑に負けそうになり、壮大な夢と理想とさらなる幸せを掴めると勘違いした。自らのファンタジーである夢物語でも結局思うようには運ばない…しかしそれに取り代わる価値ある心と精神を得たのだ。



キャビネットの中のドラッグやアルコールは、ケンが憧れて理想と思っていたアメリカ社会は皆陽気でフレンドリーで幸せそうに見えるが、隠れた所では実は孤独で問題を抱えた人も多いのだよ、表面的に全てが順調に見えても、皆誰でも苦悩苦難はあるのだよ、というリアルでダークで深遠なる世界を垣間見せる思惑もあった。



ストーリーのストラクチャーでグッド・ニュース&バッド・ニュースの法則も取り入れた。つまり良い事があれば悪い事もある。あるものを手に入れたら、あるものを失う。あるものを失ったら、また別なあるものを得る。チャンスとピンチが繰り返される。常に岐路にあたり、その都度選択を余儀なくされるのだ。これはまた人生そのものである。



ビデオの中で見える庭園でケンの息子ジローが、ソノ(ジローの母、ケンの妻)と会話しているシーンがある。ジローが着ている衣装のジャンバーの色は、赤、青、白で、アメリカを象徴する色である。



テロ前の古き良きロサンゼルスで全ロケを敢行。昭和の匂いと熱意に包まれながら、ふと切なくなるかもしれないコメディーフレーバーの一風変わったドラマをご覧下さいませ!

短編映画『サムライ・セールスマン』日本語字幕付き (25分)

【1992年/短編25分/コメディードラマ/16ミリ映画/英語/カラー】
「日本人ビジネスマン! 現代の侍!」

あらすじ:
ヤグチ・ケンは野心家。子供の頃からの夢は、リッチな国際ビジネス・マンになってカッコイイ赤いスポーツ・カーを美女と乗り回し、高級なビジネス・スーツを着こなし世界中を又にかけて活躍することだ。ある日その夢をかなえようと妻と息子を残して新天地ロサンゼルスに颯爽とやってくる。国際ビジネスといえども、実際の仕事はけん玉、紙風船、コマ等の日本の伝統的なおもちゃを売るセールスマン。それも一軒一軒の家庭訪問セールス。当初はとまどいながらも訪問リストを手にし、張り切って街を歩き回る。しかしそう簡単に売れはしない。下手な英語を使いながらドアをたたくが開けさえもしてくれず、あげくの果ては犬にまで追い払われる。失望し途方に暮れ、たどり着いたのは太平洋の海辺。この海の先には昔ジパングと言われた島国、自分の故郷日本がある。妻と息子を思い出すもこのままでは引き下がれない。もう少しここで頑張ろうと自分を励ます。

するとどこからともなく、赤いオープンカーに乗った奇麗なアメリカ人女性が声をかけてくる。名前はジョディ。ケンは訪問先リストを見るとちゃんと彼女の名が入ってるではないか! ジョディはこんな天気の良い日に落ち込んでないで、おもちゃを全部買ってあげるから元気を出して一緒にドライブしようと誘い出す。水を得た魚の様にケンは元気を取り戻し、オープンカーでボリューム一杯音楽をかけロサンゼルス中を走り回る。その夜は酒場で酔っ払い、いかに日本人ビジネスマンとしての誇りがあるかをジョディの前でスピーチする。翌朝ジョディーのキスでケンは目を覚ますと、そこは彼女の家の布団の上。ジョディは結婚を申し込む。そして一緒にビジネス・パートナーになろうと。ケンもこのチャンスとばかり自らおもちゃ会社の社長になって金儲けするんだといきまく。結婚式の準備のために、ジョディは外に買い物に出かける。一つだけ約束して欲しいことがあると言う。待ってる間、キャビネットを絶対開けては駄目よ、と。独り残されたケンはいつまでも待ち続けるが、ジョディはなかなか帰ってこない。待ち切れずにケンはあの約束を思い出す。ついに我慢できなくなり開けてはいけない禁断のキャビネットに手をのばす。そこでケンが見つけたのもはショッキングなだけでなく、超現実的なものであった。

クレジット
製作・脚本・監督・編集:長土居 政史
撮影監督:マイケル・センデハス
音楽:アラン・リー・シルバ
助監督・製作主任:キム・ミッチェル
照明:リー・ユー
カメラ助手:エイプリル・クレイトー
サウンド録音:松原 葉子
衣装:ミドリ・ウイルソン
製作アシスタント:エド・シャーマン
制作会社:MAPi プロダクション

キャスト
ケン・ヤグチ:デイヴィッド・チュング
ジョディ:サンディー・ハイト・オカダ
ケンの妻:ヒトミ・イワサキ
ケンの息子:ブライアン・イトウ
マイケル少年:ディーン・フェラロ
マイケルの母:カレン・チャテル

受賞
★センチュリー・ケーブルTV(ロサンゼルス)放映
★フィルム・フロント全米学生映画祭最終選考作品(ユタ州)放映
 


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  • 2017/02/24(金) 17:07:02

フェアファックス通り&オリンピック通り〜ロサンゼルス・アート・フェスティバル

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日本アマゾン・ジャパン無料鑑賞!マピコアート最高傑作!
*隠れマピクマを探せ! ロサンゼルスの街を走りながらアートを楽しんで下さい!




フェアファックス通りはロサンゼルスの中心を南北に走る洒落た通りです。オリンピック通りは、サンタモニカからダウンタウンを超えた東側まで続きます。1932年の夏季オリンピックを記念して10番通りに名前がつけられました。というのは、それが第10回大会だったからのようです。ドライブしながら楽しいアートもご覧下さい。きっと目が離せない光景になるでしょう。隠れマピクマも探してね!




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  • 2017/02/24(金) 02:21:31

プロフィール


nagadoifilms


1963年東京生まれ。東京出身。1987年ミネソタ州マカレスター大学卒業後、アーサー・ヤング・インターナショナル(現アーンスト&ヤング)入社。1994年UCLA大学院映画学部にて修士学位号(MFA)取得。MPAA(全米映画協会)賞受賞UCLAシネコ映画団体代表。

1999年春、短編「モーメント・カフェ」がヒューストン・ワールドフェスト映画祭で金賞受賞。2000年2月初長編スリラー映画「Cruel Game」DVD全米リリース(ユニバーサル)。「エンジェルゲーム」DVD日本マーケットリリース(D’s Gate)。「Deception」海外40ケ国配給中。

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